「MSCIリバランス」は投資家にとって株価を左右する一大イベントです。年に4回の「MSCIリバランス」は株式市場へどの程度影響があるのか?この機会を上手に利用すれば勝率が上がるのか?2021年5月末の例を紹介したいと思います。
目次
MSCIリバランスとは?
MSCIとは、 モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社のことで、MSCI指数とは当社が算出、公表している株価指数のことです。世界の機関投資家の多くが株式投資のベンチマークとしてこの指数を採用しています。
そしてこの指数は、2月・5月・8月・11月の年4回、「銘柄の入れ替え」と「組み入れ時価総額・FIF(外国人投資可能浮動株比率)の変更」が行われるのですが、これがいわゆる「MSCIのリバランス」です。特に5月と11月の規模が多いため、日本の株式市場への影響が大きくなります。
売り需要の予測がネットに出回るのでチェック
2021年5月は新規採用銘柄は無く、29銘柄が除外となり、5月27日終値を持ってリバランスを行うとのことでした。
これは日本時間5月12日にMSCIより発表されたのですが、この発表を受け「今回は除外される銘柄が多く、採用銘柄もないため、相当な売り需要として日本の株式市場に影響を与える」として報じられました。
とあるネットニュースによればこのリバランスによりソフトバンクグループには2,000億円相当の売り需要が見込まれ、今回のリバランスで最も大きい売り金額となると報じられました。ソフトバンクグループは除外銘柄ではないのですが、FIF(外国人投資可能浮動株比率)の変更に伴って構成比率を引き下げられるとのことでした。
除外銘柄の値動き
では、実際に除外銘柄の値動きを見てみましょう。
イオンモールの場合
除外銘柄の一つ、イオンモールですが、発表後の5月12日は窓を大きく開けて下に寄付きましたが、どうやら発表直後が底で、その後、リバランス実施の5月27日にかけて値を戻しています。27日は警戒されたのか、低く寄り付きましたが、結局陽線引けとなり、28日も上昇基調となりました。
ふくおかフィナンシャルグループの場合
ふくおかフィナンシャルグループも、5月12日はGDで寄り付いたのですが、結局は5月12日の寄付が底となり、上昇基調となっています。
丸井グループの場合
丸井グループは発表当日は窓を開けて下に寄り付き、さらに下げて引けていますが、その翌日からはヨコヨコの膠着状態が続き、リバランスが終わってから上昇基調となっています。
コイケjr.
コイケ
名古屋鉄道の値動き
名古屋鉄道の場合は、リバランス発表から連日値を下げていて、リバランス当日2日前にようやく上昇転換しました。このような値動きをするケースもあるので、安易に発表当日に押し目買いをするのは避けた方が良いかもしれません。
組み入れ時価総額・FIF(外国人投資可能浮動株比率)の変更銘柄の値動き
組み入れ時価総額・FIFの変更とは、簡単に言えばもともと組み入れられていた銘柄の構成比率の変更です。
上記でも述べた通り、今回はソフトバンクグループの売り需要が2,000億円相当と最も多く、次いで伊藤忠商事の売り需要が350億円相当とされていました。時価総額の大きい銘柄とはいえ、圧倒的に大きな売り圧力となることは一目瞭然ですよね。
ソフトバンクグループの場合
ソフトバンクグループの場合は、5月13日に決算発表がありました。リバランス発表時は、決算前の手仕舞などとも重なり大きく値を下げましたが、決算は好決算だったにもかかわらず、材料出尽くしだったのか、さらに大きく下げてその後低迷しています。
リバランス実施日の5分足ですが、他の銘柄と違ってずっと下げ基調、さらに大引けも値を飛ばして売られています。さすが2,000億円の威力です。
リバランス実施翌日にはある程度リバウンドしたものの結局下げ基調は変わっていません。
伊藤忠商事の場合
伊藤忠商事もリバランス発表後大きく値を下げて、その後低迷し、リバランス実施翌日は大きくリバウンドしていますが、ヨコヨコの膠着状態が続いています。
油断できないリバランスの影響
ちなみにこちらの豊田通商も構成比率の変更がありましたが、大引けが大変なことになってます。
ただ、翌日には何事もなかったかのように値を戻しています。これが予測できればひと稼ぎできますけど…
リバランス実施日に、発表前の水準に戻している場合は要警戒、といったところで、こうなるであろう銘柄をピンポイントで当てるのは難しいようです。皆が予測できなかったからこそこんな値動きになっているのでしょうけどね。
とにかくMSCIリバランス実施日当日は値動きが荒くなる、ということだけはわかっていただけたかと思います。
まとめ
こうして見てみると、リバランスで除外される銘柄はリバランス実施日にかけて売られるのかと思いきや、皆同じことを考えるせいか、リバランス実施日前に既に底を打っている銘柄が多数見受けられました。
そして、これは全ての銘柄に共通したのですが、リバランス日の翌日は大きくリバウンドをしていました。圧倒的な売り需要を見込んだソフトバンクグループでさえもリバウンドをしていました。今回は相場全体の売り需要が大きかったこともあり、毎回そうなるとは限らないのですが、今後の取引の参考にしていただければ幸いです。
- リバランス実施の翌日は大幅リバウンドのチャンス!
- 皆考えることは同じため、先回りしないと予想の逆を行く可能性大